Ⅵ:ホメオパシー枕草子

すべて世は事も無し」 その一

 花見の頃は大抵寒い。とりわけ今年の桜は気忙しく、四月を待ってくれそうもない。天気と気温をチェックし、私は両親を外へと誘った。人がまばらな平日に、近くの大きな公園で花の盛りを見せるのが、ここ数年の恒例行事だった。屋外に出にくい寒期、高齢者は様子が変わりやすい。
 「こないだ見た中庭の桜が綺麗で」。車で移動する5分の間、母はこの台詞を3回言った。うまい役者のように、毎回フレッシュに。正月会った時よりリピート間隔が短いな。私の心に雲がかかる。
 だけど車から降りると公園の木々は春爛漫。「素晴らしいね〜」見惚れる母の足取りは軽くなり、手を取る必要もない。そうしてカフェのサンドイッチを「今迄で一番おいしい」と完食する。
 心の雲間に光が射して、私は呟く「すべて世は事も無し」。

今年の桜。

すべて世は事も無し」 その一

 花見の頃は大抵寒い。とりわけ今年の桜は気忙しく、四月を待ってくれそうもない。天気と気温をチェックし、私は両親を外へと誘った。人がまばらな平日に、近くの大きな公園で花の盛りを見せるのが、ここ数年の恒例行事だった。屋外に出にくい寒期、高齢者は様子が変わりやすい。
 「こないだ見た中庭の桜が綺麗で」。車で移動する5分の間、母はこの台詞を3回言った。うまい役者のように、毎回フレッシュに。正月会った時よりリピート間隔が短いな。私の心に雲がかかる。
 だけど車から降りると公園の木々は春爛漫。「素晴らしいね〜」見惚れる母の足取りは軽くなり、手を取る必要もない。そうしてカフェのサンドイッチを「今迄で一番おいしい」と完食する。
 心の雲間に光が射して、私は呟く「すべて世は事も無し」。

今年の桜。