Ⅵ:ホメオパシー枕草子

バカンスが降ってくる その一

「長いことしておりますが、こんな事は初めてです」とご亭主は仰り、当惑されていた。コロナ禍で4年空いたが、久々の葵祭の行列が、雨予報のため突如延期となったのだ。そこは趣味の良い骨董屋さんで、店先には観覧用のやぐらが組まれていた。仕出し弁当にお茶席も設けられていた。にも関わらず、お持て成しの主役が不在となって拍子抜けされ、遠方からの来客に気遣われていた様だった。「お天気のことは仕方ないですわねえ」。集まった皆さんはそう頷きあって、珍しい日本茶の香りを愉しんでおられる。しかし雨は降らなかった。というか、まるっきりの快晴、稀に見る好天の日だった。前日には上皇夫妻が御所入りし、観覧予定だったと聴く。宮内庁のフライングだろうか?などと憶測が飛び交う。こうなるとメインはお茶の振舞いになる。しかし私はお茶が飲めないのだ。以前は好んで凝りもしたのが、ある時を境に、飲むと覚醒し過ぎる体質になっていた。

バカンスが降ってくる その一

「長いことしておりますが、こんな事は初めてです」とご亭主は仰り、当惑されていた。コロナ禍で4年空いたが、久々の葵祭の行列が、雨予報のため突如延期となったのだ。そこは趣味の良い骨董屋さんで、店先には観覧用のやぐらが組まれていた。仕出し弁当にお茶席も設けられていた。にも関わらず、お持て成しの主役が不在となって拍子抜けされ、遠方からの来客に気遣われていた様だった。「お天気のことは仕方ないですわねえ」。集まった皆さんはそう頷きあって、珍しい日本茶の香りを愉しんでおられる。しかし雨は降らなかった。というか、まるっきりの快晴、稀に見る好天の日だった。前日には上皇夫妻が御所入りし、観覧予定だったと聴く。宮内庁のフライングだろうか?などと憶測が飛び交う。こうなるとメインはお茶の振舞いになる。しかし私はお茶が飲めないのだ。以前は好んで凝りもしたのが、ある時を境に、飲むと覚醒し過ぎる体質になっていた。