Ⅵ:ホメオパシー枕草子

バカンスが降ってくる その二

  お抹茶に至ると口に含むや目は冴えて、一晩でも起きられるほど強烈に効くのである。それは仕事に差し障るという訳で、この数年お茶を避けてきた。それでも不自由はないけれど、こういう席で断るのは無粋に感じた。さて宴席は新緑の庭へと移った。点てられるのは若い人。「F君をご紹介します」。目利きのご亭主ご推薦の彼は、会社を辞めて専業茶人としてのデビューを控えていた。刈り上げ頭に作務衣姿が初々しい。正直に事情をお話しすると、「お白湯でも」と言われる。野点の机に取り取りの茶碗が並び、くり抜いた石の風炉の上で湯がしずかに沸いている。私は少し飲んでみたくなった。器を選び、ほんの少し口にする。すると茶に酔い途端に饒舌になる。「手の動きを見るのが好きなんです」と所作を褒めると、「自分でも美しいと思います」と朗らかに答えられる。そこから話は弾み、素人の私がインタビューする具合になっていた。

バカンスが降ってくる その二

  お抹茶に至ると口に含むや目は冴えて、一晩でも起きられるほど強烈に効くのである。それは仕事に差し障るという訳で、この数年お茶を避けてきた。それでも不自由はないけれど、こういう席で断るのは無粋に感じた。さて宴席は新緑の庭へと移った。点てられるのは若い人。「F君をご紹介します」。目利きのご亭主ご推薦の彼は、会社を辞めて専業茶人としてのデビューを控えていた。刈り上げ頭に作務衣姿が初々しい。正直に事情をお話しすると、「お白湯でも」と言われる。野点の机に取り取りの茶碗が並び、くり抜いた石の風炉の上で湯がしずかに沸いている。私は少し飲んでみたくなった。器を選び、ほんの少し口にする。すると茶に酔い途端に饒舌になる。「手の動きを見るのが好きなんです」と所作を褒めると、「自分でも美しいと思います」と朗らかに答えられる。そこから話は弾み、素人の私がインタビューする具合になっていた。