Ⅲ章: 「サボテン」の少年 

ある物が浮かぶ

 それまでの寡黙さと打って変わり、少年はテンポよく問いに答えてくれました。まるで、既知の生き物でも解説しているようでした。彼が描写してくれたのは、主訴「かゆみとイライラ」のキャラクター、その性質のはずでした。ところが話を聞くうちに、まるで実在する物の様に思われて来たのです。それは「水を必要とせず、砂漠に棲息する、青緑色で、星/ダイヤモンド形の、表面にイガ栗の様なチクチクがある、硬いもの。普通は10センチ位だが、吸水すると50センチ大にまで膨張し、水がないと5センチ位に収縮する。傷つけられると分裂増殖し、20-30個で群生する。毒があり、食べるとめまいと脱力が起こり、意識はあっても、物が大きく小さくなり、歪んで見える」物でした。この時点で私の脳裏には、それに似た生き物―或る植物の名が浮かんでいました。強力な幻覚作用を持つサボテン「Peyoteペヨーテ」です。

ある物が浮かぶ

 それまでの寡黙さと打って変わり、少年はテンポよく問いに答えてくれました。まるで、既知の生き物でも解説しているようでした。彼が描写してくれたのは、主訴「かゆみとイライラ」のキャラクター、その性質のはずでした。ところが話を聞くうちに、まるで実在する物の様に思われて来たのです。それは「水を必要とせず、砂漠に棲息する、青緑色で、星/ダイヤモンド形の、表面にイガ栗の様なチクチクがある、硬いもの。普通は10センチ位だが、吸水すると50センチ大にまで膨張し、水がないと5センチ位に収縮する。傷つけられると分裂増殖し、20-30個で群生する。毒があり、食べるとめまいと脱力が起こり、意識はあっても、物が大きく小さくなり、歪んで見える」物でした。この時点で私の脳裏には、それに似た生き物―或る植物の名が浮かんでいました。強力な幻覚作用を持つサボテン「Peyoteペヨーテ」です。