Ⅲ章: 「サボテン」の少年 

人間の表現へ

 経過報告は順調に見えました。頭痛はなくなり、次は足裏のチクチク感や後鼻漏が出てきました。治癒の法則通りに、症状はより末梢へ移動し、分泌物が増えました。しかし次の再診時、登校拒否はぶり返していました。私は不登校について聞きました。「一番嫌なのは通学。1時間、満員電車。ぎゅーぎゅー」。デス・スターは、電車に乗ると増え、ゲームをしたり、海に行くと減りました。最後の再診時、もう少年はきちんと会話できました。「勉強のレベルが高すぎ、やることが多すぎる」と訴えました。父にゲームを取りあげられ、怒ると押さえられました。「頭が抜けられない。金縛り」。彼は子供の頃、自殺を試みた事がある、と話してくれました。「今はもう思わない。でもデス・スターはまた増えてきた」。彼は初めて笑い顔を見せました。サボテンの少年は「押し潰され」まいとして、人間の表現を選びはじめました。

人間の表現へ

 経過報告は順調に見えました。頭痛はなくなり、次は足裏のチクチク感や後鼻漏が出てきました。治癒の法則通りに、症状はより末梢へ移動し、分泌物が増えました。しかし次の再診時、登校拒否はぶり返していました。私は不登校について聞きました。「一番嫌なのは通学。1時間、満員電車。ぎゅーぎゅー」。デス・スターは、電車に乗ると増え、ゲームをしたり、海に行くと減りました。最後の再診時、もう少年はきちんと会話できました。「勉強のレベルが高すぎ、やることが多すぎる」と訴えました。父にゲームを取りあげられ、怒ると押さえられました。「頭が抜けられない。金縛り」。彼は子供の頃、自殺を試みた事がある、と話してくれました。「今はもう思わない。でもデス・スターはまた増えてきた」。彼は初めて笑い顔を見せました。サボテンの少年は「押し潰され」まいとして、人間の表現を選びはじめました。