シーシュポスの消失 その一
「神々がシーシュポスに課した刑罰は、休みなく岩をころがして、ある山の頂まで運び上げると言うものであったが、ひとたび山頂にまで達すると、岩はそれ自体の重さでいつも転がり落ちてしまうのであった。無益で希望のない労働ほど怖しい懲罰はないと神々が考えたのは、たしかにいくらかはもっともなことであった。」『シーシュポスの神話』(カミュ著/ 清水徹訳 / 新潮社刊)より。本棚の整理中、目についた一冊の文庫本。中三の時に買ったものだが、経年劣化で焼けた紙が愛おしい。ギリシャ神話を題材にした本の表題のエピソードは、最終章6P程の小編で、引用したのはその冒頭部分である。当時内容を理解していたかは疑問だが、子供心にこの様な責苦を心底怖しく思い、入手したのだろう。でも今ではこの一文だけで、似た情景が幾つも脳裏に浮かぶ。例えば「月曜の朝になると死にたくなる」とは、かつて同業の先輩が発した言葉であった。
シーシュポスの消失 その一
「神々がシーシュポスに課した刑罰は、休みなく岩をころがして、ある山の頂まで運び上げると言うものであったが、ひとたび山頂にまで達すると、岩はそれ自体の重さでいつも転がり落ちてしまうのであった。無益で希望のない労働ほど怖しい懲罰はないと神々が考えたのは、たしかにいくらかはもっともなことであった。」『シーシュポスの神話』(カミュ著/ 清水徹訳 / 新潮社刊)より。本棚の整理中、目についた一冊の文庫本。中三の時に買ったものだが、経年劣化で焼けた紙が愛おしい。ギリシャ神話を題材にした本の表題のエピソードは、最終章6P程の小編で、引用したのはその冒頭部分である。当時内容を理解していたかは疑問だが、子供心にこの様な責苦を心底怖しく思い、入手したのだろう。でも今ではこの一文だけで、似た情景が幾つも脳裏に浮かぶ。例えば「月曜の朝になると死にたくなる」とは、かつて同業の先輩が発した言葉であった。