2023: A Space Odyssey その二
小箱内の密度にこだわる様な者は、己の外部空間にも敏感である。通勤で繁華街に出ると、もはや街中が過密に思える。「密」を感じる程度は人に依るが、この件で思い出すのは『大草原の小さな家』(ローラ・インガルス・ワイルダー著)のエピソードである。「とうさんが言うのには、今ではこの『大きな森』に住んでいる人が多すぎるのだそうです。(略)野生の動物は、こんなにおおぜい人間がいる土地には、住まなくなるのです。とうさんもやはり、住みたくないのです」。他人の斧の音や銃声が聴こえる位の「密」である。そうして主人公ローラの一家は、ウィスコンシンの大きな森からオクラホマの大草原へと幌馬車で移り住む。時は「西部開拓時代」。それは先住民からの「収奪」と「殺戮」を隠した米国史の表面で、目指した土地は彼らの「居住地」だった。広々と何ひとつないスペース。動物しか住まない場所。しかし、とうさんはそこが気に入る。
2023: A Space Odyssey その二
小箱内の密度にこだわる様な者は、己の外部空間にも敏感である。通勤で繁華街に出ると、もはや街中が過密に思える。「密」を感じる程度は人に依るが、この件で思い出すのは『大草原の小さな家』(ローラ・インガルス・ワイルダー著)のエピソードである。「とうさんが言うのには、今ではこの『大きな森』に住んでいる人が多すぎるのだそうです。(略)野生の動物は、こんなにおおぜい人間がいる土地には、住まなくなるのです。とうさんもやはり、住みたくないのです」。他人の斧の音や銃声が聴こえる位の「密」である。そうして主人公ローラの一家は、ウィスコンシンの大きな森からオクラホマの大草原へと幌馬車で移り住む。時は「西部開拓時代」。それは先住民からの「収奪」と「殺戮」を隠した米国史の表面で、目指した土地は彼らの「居住地」だった。広々と何ひとつないスペース。動物しか住まない場所。しかし、とうさんはそこが気に入る。