Ⅵ：ホメオパシー枕草子

私に賭け事を教えたのは母方の祖母だった。彼女との逸話は以前書いたが、何故そう親しくなったかと言えば、しばしば遊んでくれたからだ。呉服屋に生まれた私は忙しそうな両親の背中を見て察し、黙々と好きな事に打ち込む性分に成っていた。それでも人に会いたければ、友人や祖母の家にふらりと出かけた。祖母との遊びは専ら勝負事だった。女だてらに格闘技を愛し、「株で儲けたら一財産お前にやる」が口癖だった勝気な人だ。そんな彼女との遊びは専ら花札だった。勝てばお小遣いをくれ、報酬系を刺激してくれた。松に鶴、桜に幕、桐に鳳凰。五光や三光、赤短、青短、猪鹿蝶。派手な札や高点数の出来役。初めはそんな札集めや上がり方に魅入られた。ある時、祖母は「フケる」手を教えてくれた。密かに十五点以下で上がれれば、相手の点数によらず勝ちになる。それがうちのローカル・ルールだった。難易度が高いだけでなく、物凄くクールな勝ち方だ。