麻好きかもしれない その二
ところで一口に「麻」と言っても色々ある。「麻/大麻(アサ科)」は現在、大麻取締法で栽培・輸入・所持などがほぼ禁じられている。また別に「苧麻(イラクサ科)」や「亜麻(アマ科)」などもあるが、似て非なるものである。それぞれの繊維を「ヘンプ」「ラミー」「リネン」と呼ぶ。何れもどこか硬質で肌に纏わりつかず、じっとりと湿度の高い日本の夏にうってつけの素材である。暑がりの私は「リネン」の服を愛用しているが、着物に嵌った動機も「苧麻」製の宮古上布を譲られたせいだった。それは母が大昔に別の方から戴いたもので、私は3代目のユーザーだった。濃紺地に白い紋様が入った地味な薄衣。「これはあんたにあげる」。母の手から私の手にふわりと移された時、教養を欠き何ら価値を知らない自分にも、それが特別なものだと直感できた。かつては女性に課された人頭税だった、極めて手間暇のかかった羽衣の如く軽い布。以来、上布熱は続いた。
麻好きかもしれない その二
ところで一口に「麻」と言っても色々ある。「麻/大麻(アサ科)」は現在、大麻取締法で栽培・輸入・所持などがほぼ禁じられている。また別に「苧麻(イラクサ科)」や「亜麻(アマ科)」などもあるが、似て非なるものである。それぞれの繊維を「ヘンプ」「ラミー」「リネン」と呼ぶ。何れもどこか硬質で肌に纏わりつかず、じっとりと湿度の高い日本の夏にうってつけの素材である。暑がりの私は「リネン」の服を愛用しているが、着物に嵌った動機も「苧麻」製の宮古上布を譲られたせいだった。それは母が大昔に別の方から戴いたもので、私は3代目のユーザーだった。濃紺地に白い紋様が入った地味な薄衣。「これはあんたにあげる」。母の手から私の手にふわりと移された時、教養を欠き何ら価値を知らない自分にも、それが特別なものだと直感できた。かつては女性に課された人頭税だった、極めて手間暇のかかった羽衣の如く軽い布。以来、上布熱は続いた。