Ⅳ章: 「水晶」の人 

名刺を出す手

 「私、こういう者です」。すらりと差し出された名刺には、立派な肩書がありました。患者さんは未だうら若い、おとなしやかな女性でしたので、意外な印象を受けました。名刺の裏にはびっしりとキャリアが明記され、誇り高さが伝わる様でした。この方の初診時の愁訴は複数で、皮膚炎・ケロイド体質、多汗症など、身体の外面的なものでした。それぞれについて「何が一番困りますか?」と聞き取りをしていきますと、最終「イメージを損なう」点に帰着しました。「これが私」。彼女には強固な自分像がありました。かつては方向性が定まらず、進学や就活で苦労された奥手なお嬢さんでした。ところが、ある物事や人に魅了されてから、それを雛形に模範として、大変身されました。水晶が析出する如くメキメキと一直線に、煌びやかな「私」を結晶化してこられたのです。

名刺を出す手

 「私、こういう者です」。すらりと差し出された名刺には、立派な肩書がありました。患者さんは未だうら若い、おとなしやかな女性でしたので、意外な印象を受けました。名刺の裏にはびっしりとキャリアが明記され、誇り高さが伝わる様でした。この方の初診時の愁訴は複数で、皮膚炎・ケロイド体質、多汗症など、身体の外面的なものでした。それぞれについて「何が一番困りますか?」と聞き取りをしていきますと、最終「イメージを損なう」点に帰着しました。「これが私」。彼女には強固な自分像がありました。かつては方向性が定まらず、進学や就活で苦労された奥手なお嬢さんでした。ところが、ある物事や人に魅了されてから、それを雛形に模範として、大変身されました。水晶が析出する如くメキメキと一直線に、煌びやかな「私」を結晶化してこられたのです。