Ⅳ章： 「水晶」の人　

　彼女のS N Sには、肩書と共に活動実績が整然とアップされていました。はじめ独りで立ち上げられた事業。努力家で実務に有能、センスも優れた方でした。ただケーステイクが進むと、見えない苦労もわかってきました。仕事に全集中して、プライベートにかける精力が残らない。元来口下手で感情表現ができず、知らない人と打ち解けられない。試験やプレゼン前には失敗を恐れひどく緊張し汗をかく。その量が尋常でなく、靴底が台無しになり、掌がふやける程なのだと。その手で他人に触れるのを憚られます。これら長年のコンプレックスは、他人にひた隠して来られました。皮膚炎を治療すると発汗は悪化し、逆も然りです。傷は膿み易く硬い瘢痕に、腺は静かに腫れ、虫刺しも硬くしこります。汗かき膿出しながら、包み隠して涼しく振る舞い硬くなる、彼女の体は心の代弁者でした。