Ⅳ章： 「水晶」の人　

　これが五番目のセルに入りました。ここで一旦ケーステイクに戻りましょう。私は定番の質問をしました。「好きな事について話して下さい」「美味しいものを頂く事です！」。初めて表情がほころび、柔らかな笑みが溢れました。彼女は食に非常なこだわりがありました。幼い頃より嫌いなものは受けつけず、美食家で、食べると全般的に好転しました。逆に空腹下では簡単に衰弱してしまう様でした。このようにはっきりした好転・悪化条件は「Modalityモダリティ」と総称され、様々な種類があります。季節・気候・気温・時間帯・屋内外・窓の開閉・隙間風・場所・飲水飲食・体各部の締め付け・人の存在・慰めや同情の言葉などなど。凡ゆる状況が心身に影響し、その感受性のあり方に、個人の特徴が出るのです。彼女の場合はまた、褒められたり、注目されると劇的に好転しました。