Ⅱ章:「真珠貝」の人  

人魚姫の痛み

 「私に脚ができました。この歳になってやっと。これまでは幽霊の様だった。昔の日本の画でみる、腰から下が無いような。でも今は違う。脚がある。まるで人魚姫が生まれたばかりの両脚を踏み出して歩くときみたい。一足ごとに血の滲むような痛みがある。でもそれすら、とても嬉しい感じなのです」。これは或る患者さんの再診時の喜びに満ちた報告です。先天性の病の為に手術とギプス固定を繰り返し、幼少時より長らくベッド上生活を強いられていました。それでも成人前には普通の生活を営めるようになり、結婚し子宝に恵まれて傍目には何不自由ない恵まれた暮らしをしていました。スポーツも仕事もできました。しかし強い視線恐怖・適応障害・アレルギーなどが次々現れ、生きづらくなりました。また彼女にはずっと不思議な感覚がありました。「脚が無い感じ」。

人魚姫の痛み

 「私に脚ができました。この歳になってやっと。これまでは幽霊の様だった。昔の日本の画でみる、腰から下が無いような。でも今は違う。脚がある。まるで人魚姫が生まれたばかりの両脚を踏み出して歩くときみたい。一足ごとに血の滲むような痛みがある。でもそれすら、とても嬉しい感じなのです」。これは或る患者さんの再診時の喜びに満ちた報告です。先天性の病の為に手術とギプス固定を繰り返し、幼少時より長らくベッド上生活を強いられていました。それでも成人前には普通の生活を営めるようになり、結婚し子宝に恵まれて傍目には何不自由ない恵まれた暮らしをしていました。スポーツも仕事もできました。しかし強い視線恐怖・適応障害・アレルギーなどが次々現れ、生きづらくなりました。また彼女にはずっと不思議な感覚がありました。「脚が無い感じ」。